光は粒子か波か。
どちらでもあるのか、あるいはどちらでもないのか。
光には粒子の性質と波の性質があり、どちらかだけでは説明がつかない現象も確認されています。
それらが解明される以前より、光は人を魅了し、多くの科学者を悩ませてきました。
光の現象の一つとして、旋光があります。物質を通過する際に、その物質によって光が回転する現象が旋光です。
物質や化合物が光を回転させる性質がある時、旋光性がある、または光学活性を持つ物質と言われます。
光は、物質により右回りにも左回りにも回転し、また回転する角度も様々です。
旋光度からその物質が何かを見極めることができます。
その旋光度を測るのに使われるのが、旋光計です。
光は揺れながら進むという波状の性質を持っています。
波状の光が物質を通過する際に、揺れる方向が回転するという現象があります。
これが光の旋光です。
それを踏まえたうえで、旋光をわかりやすく例えてみましょう。
横長の紙に線で波を描きます。
その紙の両端の中心を指で固定し、色々な角度に回します。
これらの色々な角度の方向に揺れる波が複雑に絡みあったものが自然光、通常の光の状態です
この状態では、旋光度を測ることはできません。
あらゆる角度の方向に揺れる光の波があるため、どの波が物質を通過してどの程度回転したかが分からないためです。
そこで、色々な角度の方向で揺れながら進む光を一つの角度の方向に限定する必要があります。
そのために偏光子というものに光を通します。
偏光子は格子状になっており、光を通さない線と、光を通す隙間が細かく交互に並んでいます。
あらゆる角度の方向に揺れながら進んでいた光が、偏光子に遮られ、一つの角度の方向に揺れる光の波だけが通過するのです。これを偏光といいます。
偏光子を2つ重ねて1つだけ回転させると、光が完全に遮断される角度があります。
1つ目の偏光子を通り、一つの角度の方向の波に絞られた光が、2つ目の異なる偏光子により遮られるためです。
偏光子(旋光計では2つ目の偏光子は検光子ともいいます)を回転させて、偏光の光が通る、または遮られる角度を探ることにより、物質を通過したときの旋光の角度を測ることができます。
旋光計はこの原理を使い、物質の旋光度を測ります。
旋光計とは、光の旋光の角度を測るための測定器です。
一般的な旋光計には、光源や偏光子などの機構がついています。光源から発した光を偏光子へ通し、光の波の角度を限定し、測定したい物質を通過した所で、光の回転した角度を測ります。
測定する際に、光源に向かい振動面が時計回りに回転しているように見えたら右旋性、反時計回りに回転するように見えたら左旋性となります。
右旋性は、右を意味するラテン語のdextroから、英語ではdextrorotatoryまたはd-rotatory、左旋性は、左を意味するラテン語のlevoから、英語ではlevorotatoryまたはl-rotatoryと呼ばれています。
光学異性体の表示法d-体、l-体は、ここからきている言葉です。
旋光計は、精製糖業界や薬剤の業界で多く使われてきました。精製糖業界では、糖の種類を見極めたり、純度を知るために用いられています。
また、薬剤の世界では、旋光度によってその化合物が定義されていることが多く、どの物質なのかなどを確認するために使われています。
光の旋光、偏光板などと聞くと難しく、想像がしづらいかもしれませんが、偏光板は意外と生活の身近な場所で使われています。
思い通りの写真を撮るために、偏光版はカメラのレンズには欠かせません。
雪山やウォータースポーツ、釣りなどで視界が眩しい経験をされたことはないでしょうか。雪や水面で乱反射した光を制御し、必要な光だけを透過させる偏光板は、このようなレジャー・スポーツで多く使われています。
液晶ディスプレイには、偏光板が二つあります。鮮明な画像を表示するために、様々な方向の光をコントロールし、一定方向の光のみを取り出しています。