特に安全性においては、微生物制御における監視機器としてpH計が使われます。
微生物の増殖および代謝は栄養分・水分・温度・pH等によって左右されます。
特にpHは食品の品質保持に重要な役割を果たし、食品添加物pH調整剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウム等)が広く使用されています。
微生物生育に最適なpHがあり、酸性側とアルカリ性の生育限界pH値は、微生物の種類によって異なります。最適値pHから外れると微生物の増殖は抑制されます。
HACCPでは微生物制御のための3大モニタリング項目として、温度・水分活性・pHをチェック項目としている食品が多いです。
pH計は発酵工程管理にも用いられます。
発酵がうまく進むかどうかは、発酵微生物の正常な働きをいかに引き出すかにかかってくるからです。
使用する小麦粉の吸水量、水の硬度とpHがおいしさに影響し、使用する水はpH:6~7が良いと言われています。水と小麦粉が反応すると、乳酸菌が働いて乳酸を生成しpHが下がります。
例えば、天然酵母では、ライ麦粉サワー種やレーズン種などの酵母作りにpHが必要とされておりpHは3.5~4.5であることが多いようです。
牛乳(約pH6.7)にスターター(乳酸菌)を加え醗酵させます。乳酸菌の作用は、乳中の乳糖を分解して乳酸を生成してpHを低下させて、レンネット(乳を固める酵素)の凝乳作業を助けるなどの働きをします。pHが低下し、レンネットを添加するタイミングを判断する際に、乳酸酸度かpHの値が参考になると言われています。製造するチーズの種類によってレンネットを添加するタイミングのpH値は異なり、ハード系は:pH5.5、モッツァレラ:pH6.5、カマンベール:pH6.5以下 などです。
味噌は原材料となる米、麦、大豆などに麹を混ぜて発酵させます。この発酵過程でアミノ酸、ビタミン類、各種有機酸、乳酸菌が生じて乳酸菌の働きにより、pHが低下していきます。
なお、適度に熟成した味噌のpHは一般的に4.9~5.1とも言われています。
醤油も味噌と同じ様に乳酸菌の働きにより、pHが低下していきます。醤油のpHは4.7~5.0 と言われています。
ビールの仕込み中のpHがビールの品質や味覚に影響を及ぼます。
仕込み中のマッシュ(麦芽と湯を混ぜる)はpH:5.2~5.6が望ましいと言われています。 pH 5.6以上だと酵素の働きに悪影響出たり、雑味要因のタンニンを抽出しやすくなる等のでマッ シュのpH管理が重要となるのです。また、5.0以下だと麦芽の変質や腐敗の可能性があります。
洗米や仕込み水に用いる醸造用水のpH基準は中性または微アルカリ性とされています。
市販されている最終製品の日本酒はpH:4.2~4.7です。
ワイン造りでは、pHを低く抑えた方が良いワインができると言われています。
pH3.0~3.5が適正pH値とされていますが、その理由として、pH3.5を超えると、酸化が進む・ 色調が褐色化する・バクテリア増加など品質に影響が出るためです。
ぶどう果汁発酵初期に亜硫酸塩を添加して、pHを酸性側にコントロールし、発酵をスムーズにさ せるます。ワイン製造には、糖度や温度はとても重要な指標ですが、pH測定やその制御もワイン 造りの鍵となるのです。